【再休職を防ぐ】復職支援を産業医と連携して成功させる方法

【再休職を防ぐ】復職支援を産業医と連携して成功させる方法

病気やケガでしばらくお仕事をお休みした後、どのようにすればスムーズに戻れるのか、不安を感じる方は少なくありません。

以前の労働環境や仕事内容、同僚との関係などが気になり、緊張や不安が募ることもあるでしょう。そんな時、企業が産業医と連携して提供する「復職支援」が、心強いサポートとなります。

この記事では、復職支援の進め方についてステップバイステップで説明していきます。また、産業医と連携しながら再休職を防ぐためのポイントについても解説していきます。

復職支援のステップ

以下のステップに沿って進めていきましょう。

  1. 休職中に行うケアのサポート計画を立てる
  2. かかりつけ医が職場に戻れるか判断する
  3. 職場復帰支援プランを作成する
  4. 仕事に戻れるか最終的な判断をする
  5. 定期的にフォローアップする

ステップ1:休職中に行うケアのサポート計画を立てる

対象者が休職を開始した後と休職中のケアは、以下のように多岐にわたります。

  1. 休職開始の手続きと企業の対応
  2. 傷病手当金のサポート
  3. 休職中の相談窓口と支援プラン
  4. 休職支援のコミュニケーションの推進
  5. リワークプログラムの提案
  6. 積極的なコミュニケーションの実施

1.休職開始の手続きと企業の対応

休職支援のプロセスは、まず従業員がかかりつけ医から発行された「病気休業診断書」を企業に提出することから始まります。この診断書には病気やケガによる休職の必要性が明記されており、従業員はそれに基づいて療養を開始します。

企業の役割は、診断書を受け取ったら、従業員が仕事を気にせず、心身をしっかり休める環境を整えることです。

2.傷病手当金のサポート

従業員に対して傷病手当金の申請方法や手続きについての説明を行い、経済的な不安を解消するためのサポートをしましょう。

傷病手当金の申請は従業員と企業のどちらが手続きを進めるかを確認し、後々トラブルや手違いによるミスが発生しないよう注意してください。

3.休職中の相談窓口と支援サービス

休職中の従業員に対しては、ただ療養を促すだけでなく不安や悩みを相談できる窓口や公的・民間の支援サービスについても情報を提供することが推奨されます。

特に長期の休職の場合は、リワークプログラムや、その他のサポートサービスを提案することで、従業員が療養中に再び勤め先で働ける見通しを持つことができ、安心して治療に専念できる体制を整えられるでしょう。

また、休職の最長期間や休職期間中の福利厚生などについても事前に十分な説明を行い、従業員が休職に対して不安を感じないようにすることが重要です。

4.リワークプログラムの提案

従業員が長期にわたる休職に入る場合、リワークプログラムの利用を提案することが有効です。これにより、段階的な準備が整い、スムーズな業務適応を支援することが可能になります。

リワークプログラムは、休職中の従業員が必要なスキルや体力を徐々に回復させるためのものです。労働環境に再適応するための準備期間として機能するため、従業員はしばらく仕事を休んだ後も無理なく業務に戻りやすくなります。

5.積極的なコミュニケーションの実施

休職支援の最初の段階では、従業員の病状や休職の理由を的確に把握することが不可欠です。従業員の健康状態が十分に把握されていない場合、必要な支援が提供されないため、スムーズに仕事を開始できず全体のプロセスが滞ることがあります。

また、会社側からの説明が不足していると、従業員は自分の立場や今後の展望について不安を感じ、療養に集中できなくなる恐れもあるでしょう。このような問題を避けるためには、企業側が従業員とのコミュニケーションをしっかりと取り、適切なサポートを提供することが求められます。

ステップ2:かかりつけ医が職場に戻れるか判断する

休職が一定期間続いた後、従業員が「もう一度仕事をやりたい」という意思を示した場合、次にかかりつけ医が「職場に戻り仕事を始められるか」を判断します。従業員は、かかりつけ医が作成した「復帰が可能である」ことを示す診断書を会社に提出します。

この診断書には、再び仕事に就くにあたって、どのような業務上の配慮が必要かについての具体的な指示が記載されていることが望ましいでしょう。

以下の内容を記載しておくといいでしょう。

  • 労働者自身の意欲
  • 産業医による意見聴取
  • 労働者の心身の健康状態や業務遂行能力
  • 勤め先の支援状況

ただし、かかりつけ医の判断は日常生活を基準にしていることが多いため、実際の労働環境における業務遂行能力が十分かどうかは別の問題となります。仕事中にかかるストレスや業務負担を考慮しなければ、せっかく仕事を再開できても、再び体調を崩す可能性があります。

そのため、企業はかかりつけ医の診断だけでなく産業医の意見も取り入れて、慎重に判断することが重要です。産業医は勤め先の実態をよく理解しており、従業員が仕事を再開した際にどの程度の配慮が必要かを総合的に判断します。

ステップ3:職場復帰支援プランを作成する

かかりつけ医と産業医の意見を基に、「仕事を再開できる」と判断された従業員に対しては具体的な職場復帰支援プランを作成します。ここでは仕事を開始する日付、業務上の配慮事項、人事労務上の対応、そして産業医の医学的な見解を反映させることが求められます。

具体的な配慮事項としては、業務内容の変更や業務量の調整、さらには残業や深夜勤務の制限などが含まれます。これにより、従業員が安心して勤め先に戻れる体制を整えることができます。

さらに、フォローアップについても計画します。フォローアップ面談やサポート体制、業務適応の進捗を定期的に確認し、必要に応じて作成したプランを見直すことが重要です。これにより、復職後に生じる可能性のある問題にも柔軟に対応できます。

プランの具体的な作成手順は、以下の通りです。

  1. 情報を集め評価するう
  2. 勤め先に戻れるか判断する
  3. プランを実際に作成する

1. 情報を集め評価する

作成にあたっては、まず必要な情報を収集し、評価を行います。

労働者が「もう一度、仕事に戻りたい」と意思を示しているか確認することが第一歩です。産業医やかかりつけ医からの意見、労働環境の評価、家族からの支援状況などが含まれます。

2. 勤め先に戻れるか判断する

収集された情報をもとに、産業保健スタッフや管理監督者は勤め先に戻れるかを判断します。産業医やかかりつけ医の意見はもちろん、業務負荷や労働者の業務環境への適応力も考慮されます。

特に過剰なストレスや健康リスクが再発する可能性がある場合、ステップバイステップで仕事を再開することが推奨されます。この判断には、労働者の状態を慎重に評価し、最適なタイミングで決定することが重要です。

3. プランを実際に作成する

復職が可能と判断された場合、具体的なプランを作成します。以下の項目を詳細に記載して作成しましょう。

  • 日付:従業員の回復状態や職場の準備状況に応じて日付を決定します。
  • 業務上の配慮:業務内容や業務量の調整、残業や夜勤の制限、さらには業務の一部免除などが考慮されます。また、業務遂行にサポートが必要な場合、その方法も記載します。
  • 人事労務管理上の対応:配置転換や異動の可能性、勤務制度の変更の必要性など、労働者にとって適切な環境作りを目指します。
  • 産業医の意見:医学的な見地からの安全配慮や、支援に関する意見も反映させます。
  • フォローアップ:継続的なフォローアップの方法も事前に計画され、必要なタイミングで定期的に確認や評価が行われます。

厚生労働省のサイトからフォーマットをダウンロードできるので、必要に応じて利用してみましょう。

ステップ4:仕事に戻れるか最終的な判断をする

職場復帰支援プランが完成した後に、仕事に戻れるか最終決定を行います。企業は産業医からの「職場復帰に関する意見書」をもとに、この判断が適切であるかどうかを最終的に決定します。特にうつ病などのメンタルヘルスに関わる場合は再発のリスクがないかどうかを、慎重に確認することが重要です。

最終決定後は休職者に対して、日付や業務上の配慮内容を丁寧に説明し、安心して仕事を再開できるようサポートします。明確な指示を与えることで従業員は不安を感じることなく、そして依然よりも仕事に集中できる環境が整います。

ステップ5:復帰後は定期的にフォローアップする

従業員が再び勤め先に適応し、長く働き続けるためには、企業側の継続的なフォローアップが欠かせません。直後は特に心身のバランスが不安定になりやすいため、適切なサポートを提供し、従業員が安心して仕事に取り組める環境を整えることが重要です。

そのなかでも、「管理監督者と産業医によるサポート」「定期的なコミュニケーションと適切な支援の提供」などがポイントとなります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

管理監督者と産業医によるサポート

従業員に対しては、管理監督者と産業医が連携してフォローアップやサポートしていくことが重要です。直後は従業員が業務に適応できているかを定期的に確認し、必要に応じて立てたプランの進捗をチェックしましょう。

この過程では、業務量や仕事内容が過度の負担になっていないかを確認し、必要に応じて調整する柔軟な対応が求められます。

定期的なコミュニケーションと適切な支援の提供

定期的な面談やチェックインを通じて、体調や業務適応状況を把握することが大切です。これにより、ストレスの蓄積や体調の再悪化を未然に防ぐことができます。

また、復職者を支える同僚にも負担がかからないよう、企業全体で協力する体制を整えることが必要です。従業員の適応状況を継続的に評価し、必要に応じて適切なサポートを提供し続けることで、安定した復帰を実現できるでしょう。

復職支援をスムーズに進めるためのポイント

復職支援をスムーズに進めるためのポイントは、以下の通りです。

  1. 休職から復職までの流れを明確にする
  2. 産業医との連携して復職支援プランを作成する
  3. 試し出勤制度を導入する
  4. 産業医による定期的なフォローアップを実施する

1.休職から復職までの流れを明確にする

従業員が休職から復職に至るまでのプロセスを明確にすることは、スムーズな支援の基本です。まず、休職が必要となった従業員から病気休業診断書が提出されることで休職が開始されます。

この段階では、傷病手当金の手続きや、休職中に利用できる公的・民間の支援サービスについて説明することが重要です。再び仕事を再開することに対する不安を感じないようにすれば、休職中の安心した療養をサポートできます。

また、従業員が復職に向けて適切な支援を受けるために、休職の最長期間やリワークプログラムの利用についても説明し、企業としてのサポート体制を整えておくことが重要です。特に、企業内で定めたリワークプログラムの位置づけや期間については、明確に伝えることがトラブルを防ぎます。

2.産業医との連携して復職支援プランを作成する

復職のサポートを進める際には、産業医との連携が重要です。産業医は従業員の健康状態を医学的な観点から評価し、職場環境や業務内容が従業員に適しているかどうかを判断します。

かかりつけ医は日常生活に基づいて判断しますが、職場の業務負担やストレス環境は日常生活とは異なるため、職場復帰に適した配慮が必要です。産業医はこのギャップを埋めるための重要な役割を果たし、段階的な業務復帰や労働時間の調整を提案するなど、企業が実際の業務環境に合わせたプランを作成するのを支援します。

産業医の休職者に対する解像度の高さがプランの具体性と実現性に影響します。

3.試し出勤制度を導入する

試し出勤やリハビリ出勤は、プレッシャーを軽減しながら、自分のペースで準備を進める制度です。特にメンタル不調の従業員にとっては職場への再適応が大きな負担となることが多いため、このようなステップを設けることで業務負担に対する抵抗感を少しずつ解消し、「もう一度仕事ができる」と自信を持たせる効果があります。

試し出勤制度の一例は、以下の通りです。

  • 模擬出勤:仕事に行く時間に起きて、図書館で本を読んだり日中に軽作業をしたりする。
  • 通勤訓練:自宅から勤め先まで実際に通勤してみる
  • 試し出勤:一定期間、時短でもいいので実際に勤め先に行って軽作業をこなす

こうした制度を導入して段階的に進めていくことで、再休職を防ぐ効果が期待できるでしょう。

4.産業医による定期的なフォローアップを実施する

仕事を再開した後も、産業医や管理監督者との連携を続けることが再休職の防止には不可欠です。直後は従業員が職場環境や業務に無理なく適応できているかどうかを定期的に確認し、必要に応じて業務内容や労働時間の見直しを行います。

産業医は従業員の健康状態を観察し、職場の環境が従業員の回復にどのように影響を与えているかを評価します。復職者自身がストレスを感じる場合、や業務負担が大きいと判断された場合は産業医の意見を取り入れて、業務内容の調整や配置転換などの対応を行うなど、従業員が再び体調を崩さないようにサポートしていきましょう。

休職者の復職支援は産業医と連携して進めていこう

この記事では、復職支援を成功させるための具体的なステップを解説し、スムーズに進めるための方法を紹介しました。

復職支援を効果的に進めるためには、明確な仕組み作りと産業医との密な連携が不可欠です。この記事を活用し、産業医の力を最大限に引き出しながら、休職者が自信を持って、そして安心して復職できるサポート体制を整えましょう。

産業医 / 健康経営アドバイザー 松田悠司

この記事を書いた人