多様性を尊重し活かす!健康で働きやすい職場づくり
働く人の個性は、まさに十人十色。年齢や性別、国籍、文化、宗教、性的指向、障害の有無、そして価値観やライフスタイルまで、実に様々な「違い」が存在します
本記事では多様性を理解し、活かすための具体的な方法を紹介します。多様な人材がそれぞれの個性を発揮し、活き活きと働ける職場環境を作るためのヒントが満載です。組織の活性化、ひいては社会全体の進化に繋がる、多様性という文化を理解していきましょう。
職場における多様性とは?
職場における多様性とは、働く人々が持つ様々な「違い」を意味します。性別、年齢、国籍、文化、宗教、性的指向、障害の有無など、一人ひとりが異なる個性や背景を持っているということです。
具体的には、次のような「違い」が考えられます。
- 年齢:20代の若手社員から60代のベテラン社員まで、幅広い年齢層が共に働いています。
- 性別:男性、女性だけでなく、自分の性をどちらにも当てはまらないと感じる人もいます。
- 国籍・文化:同じ国籍であっても出身地や育った環境によって文化は異なりますし、異なる国籍の人も一緒に働いています。
- 宗教:仏教、キリスト教、イスラム教など、様々な宗教を信仰する人がいます。
- 性的指向:異性を好きになる人、同性を好きになる人、あるいは両方を好きになる人など様々です。
- 障害の有無:目が見えない、耳が聞こえない、車いすを使うなど、様々な障害を持つ人も働いています。
- 価値観・考え方:政治的な考え方、社会問題に対する考え方、仕事に対する考え方など、一人ひとり異なる価値観や考え方を持っています。
- ライフスタイル:結婚しているか、子どもがいるか、趣味は何なのかなど、ライフスタイルも多様です。
- 経験・スキル:これまでの経験やスキルも人それぞれです。
このように、職場には実に多様な人々が集まっているのです。これらの「違い」を認め、尊重し、活かしていくこと、それが職場における多様性です。
職場における多様性がなぜ重要なのか
なぜ職場における多様性が重要なのでしょうか?医師の立場から考えてみると、人間の身体は様々な臓器や細胞がそれぞれの役割を果たすことで健康が保たれているように、組織も多様な人材がそれぞれの個性を活かすことで、より良い成果を生み出すことができると考えられます。
多様性を尊重することで、次のようなメリットが期待できます。
- 新しいアイデアが生まれる:多様な考え方や価値観を持つ人が集まることで、一人では思いつかないような斬新なアイデアが生まれる可能性が高まります。
- より良い人間関係:お互いの「違い」を理解し、尊重することで、良好な人間関係を築くことができます。良好な人間関係は、ストレス軽減にも繋がり、心身の健康にも良い影響を与えます。
- 働きやすい環境:誰もが自分らしく働ける環境を作ることで、社員のモチベーションが上がり、生産性の向上に繋がります。
- 組織の活性化:多様な人材がそれぞれの個性を活かして働くことで、組織全体が活性化し、より良い成果を生み出すことができます。
- 企業イメージの向上:多様性を尊重する企業は、社会的に高く評価され、優秀な人材を惹きつけることができます。
多様性を活かす職場は、まるで栄養バランスの良い食事のようです。様々な栄養素を含む食材をバランスよく摂取することで、健康を維持できるのと同様に、多様な人材がそれぞれの能力を発揮することで、組織全体がより強固になり、成長を促進します。
職場における多様性の理解を深める5つのポイント
多様性を尊重する、という言葉はよく耳にしますが、具体的に何をすればいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、多様な人材がそれぞれの個性を発揮し、活き活きと働ける職場環境を作るためのポイントを、医師の視点も交えながら分かりやすく解説します。
多様性の定義:人種、性別、年齢、宗教など
多様性とは、人種、性別、年齢、宗教といった分かりやすい違いだけでなく、学歴、職歴、価値観、考え方、ライフスタイルなど、一人ひとりが持つあらゆる違いを包括的に捉える概念です。まるで、様々な楽器がそれぞれの音色を奏でるオーケストラのように、職場には多様な個性を持つ人々が集まっています。
例えば、ある人は社交的でチームをまとめるのが得意かもしれませんし、別の人は黙々と作業に集中するのが得意かもしれません。また、ある人は新しい技術を学ぶことに貪欲で、別の人は豊富な経験を活かして的確な判断を下すことに長けているかもしれません。これらの違いこそが、多様性なのです。
多様性と包括性(インクルージョン)の違い
多様性と包括性(インクルージョン)はどちらも、より良い職場環境を作る上で重要な概念ですが、その意味合いは少し異なります。
多様性は、様々な個性を持つ人々が職場に存在している状態を指します。例えるなら、色とりどりの野菜が並んでいるサラダバーのようなイメージです。
一方、包括性とは、多様な人材がそれぞれの個性を活かし、互いに尊重し合いながら、快適に働ける環境のことです。サラダバーで言うと、それぞれの野菜が新鮮な状態で適切に管理され、美味しく食べられる状態と言えるでしょう。
多様性があるだけでは、すべての人が最大限に能力を発揮できるとは限りません。包括性があってこそ、多様な人材が輝き、組織全体が活性化するのです。人間の身体も、様々な臓器がそれぞれの機能を十分に発揮することで健康が保たれるように、組織も包括性によって多様性を活かすことで、より良い成果を生み出すことができるのです。
職場における多様性の現状と課題
グローバル化が加速する現代社会において、職場における多様性はますます重要になっています。しかし、現実には多くの課題も存在します。
例えば、女性管理職の割合が低い、外国人社員が活躍しにくい、障害のある人が働きにくい、LGBTQ+の人々が安心して働ける環境が整っていない、といった問題が挙げられます。また、無意識のうちに特定の人を優遇したり、排除したりしてしまう「アンコンシャス・バイアス」も、多様性を阻害する要因の一つです。
これらの課題を解決するためには、多様性に関する教育や研修を実施する、多様な働き方を支援する制度を導入する、ハラスメント対策を強化するなど、組織全体で取り組む必要があります。
多様性のメリット:生産性向上、創造性向上など
多様性を尊重し、活かすことで、組織には様々なメリットがもたらされます。多様な考え方や価値観を持つ人々が集まることで、新しいアイデアが生まれやすくなり、創造性が向上します。
また、多様な顧客のニーズを的確に捉えることができ、より質の高い製品やサービスを提供できるようになります。さらに、従業員の満足度やモチベーションが向上し、離職率の低下にも繋がります。
多様性を実現するための企業の取り組み事例
すでに多くの企業が、多様性を尊重した職場づくりに積極的に取り組んでいます。
例えば、フレックスタイム制やテレワークを導入し、多様な働き方を可能にする企業が増えています。また、育児や介護と仕事を両立しやすい制度を整備することで、子育て世代や介護をする社員の負担を軽減する取り組みも広がっています。
さらに、多様性に関する研修を実施し、従業員の意識改革を促進する企業も増えています。
これらの取り組みは、従業員の働きがいを高め、企業の競争力強化にも繋がっています。
多様性の実現は一朝一夕には達成できません。しかし、一人ひとりが多様性の重要性を理解し、積極的に行動することで、より良い職場環境、ひいてはより良い社会を築くことができるはずです。
多様性を尊重した職場環境を作るための4つのステップ
多様性を尊重した職場環境は、企業の成長や発展、そしてそこで働く従業員一人ひとりの幸せのために欠かせません。
人間の身体も、心臓、肺、胃、腸など、様々な臓器がそれぞれの役割を担い、調和することで健康が保たれます。これと同じように、職場も多様な人材がそれぞれの個性を活かし、協力し合うことで、より大きな成果を生み出すことができます。
ここでは、多様性を尊重した職場環境を作るための4つのステップを、具体的に解説します。
- 適切なコミュニケーション
- 職場環境の整備
- 制度の導入
- 教育・研修の実施
適切なコミュニケーション:相手の文化や価値観を尊重する
育った環境や文化、価値観、考え方も人それぞれです。良好な人間関係を築き、生産性の高い職場を実現するためには、相手の文化や価値観を尊重したコミュニケーションが不可欠です。
例えば、海外出身の同僚に対しては、日本の文化や習慣を押し付けるのではなく、相手の文化や習慣を理解しようと努めることが大切です。また、宗教上の理由で特定の食品が食べられない同僚には、食事会などで配慮が必要です。
コミュニケーションにおいて重要なのは、相手の立場に立って考えることです。相手の気持ちを理解しようと努め、丁寧な言葉遣いを心がけることで、信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションに繋がります。
職場環境の整備:合理的配慮、ハラスメント対策など
多様な人材が安心して快適に働ける職場環境を整備することも、組織の健康にとって重要な要素です。身体的な配慮はもちろんのこと、それぞれの文化や価値観に配慮した環境づくりが必要です。
例えば、車椅子利用者のために、スロープやエレベーター、多機能トイレなどを設置することはもちろん、視覚に障害のある方のために、音声案内や点字表記を導入する、聴覚に障害のある方のために、筆談ツールや手話通訳を用意するなど、それぞれの状況に合わせた配慮が必要です。
また、ハラスメント対策も重要です。ハラスメントは、まるでウィルスのように、職場環境を悪化させ、働く人の心身を蝕みます。ハラスメント相談窓口の設置や研修の実施など、適切な対策を講じることで、安心して働ける環境を整備しましょう。
制度の導入:フレックスタイム制、育児・介護休暇制度など
多様な働き方をサポートする制度を導入することで、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能になります。これは、一人ひとりの身体の状態に合わせて治療法を選択する、個別化医療の考え方に似ています。
フレックスタイム制は、始業・終業時刻をある程度自由に設定できる制度です。子育てや介護、通院、自己啓発など、個々の事情に合わせた働き方が可能になります。育児・介護休暇制度は、子育てや介護を理由に一定期間休暇を取得できる制度です。これにより、家庭と仕事の両立がしやすくなり、安心して働き続けることができるでしょう。
その他にも、リモートワーク制度や時短勤務制度など、様々な制度があります。これらの制度を適切に活用することで、多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できる環境を整備することができます。
教育・研修の実施:ダイバーシティ研修、アンコンシャスバイアス研修など
多様性に関する教育や研修は、従業員の多様性に対する理解を深め、無意識の偏見をなくすために重要です。
ダイバーシティ研修では、多様性の定義やメリット、多様な人材とのコミュニケーション方法などを学ぶことができます。アンコンシャスバイアス研修では、自分自身の無意識の偏見に気づき、それを克服するための方法を学ぶことができます。
これらの研修を通して、従業員一人ひとりが多様性の重要性を理解し、多様性を尊重した行動をとることができるようになります。また、研修は一方的な講義形式ではなく、グループワークやロールプレイングなどを交えた実践的な内容にすることで、より効果的に学習することができます。
まとめ
多様な人材が活躍できる職場は、組織の成長を支える大きな力となります。性別、年齢、国籍、文化、宗教、性的指向、障害の有無など、様々な「違い」を認め合い、それぞれの個性を尊重することで、活気あふれる職場環境が生まれます。
多様性を尊重することは、新しいアイデアの創出、良好な人間関係の構築、働きやすい環境づくり、組織の活性化、企業イメージの向上など、多くのメリットをもたらします。
ぜひ、あなたの職場でも、多様性を活かした、健康で働きやすい環境づくりに取り組んでみませんか?
産業医 / 健康経営エキスパートアドバイザー 松田悠司