健康経営が企業を変える!生産性アップ&業績向上につながる4つの効果
現代社会において、企業の価値はもはや商品やサービスの質だけでは測れません。「従業員の健康」という新たな指標が、企業の成長を左右する時代へと突入しています。企業活動の根幹を支える従業員の健康状態を改善し、活力に満ちた職場環境を構築することは、企業にとって以下の4つの大きなメリットをもたらします。
- 生産性向上
- 企業イメージの向上
- 離職率の低下
- 医療費の削減
本記事では具体的なデータや事例を交えながら、健康経営の驚くべき効果を紐解いていきます。
1.生産性の向上
健康経営は、会社にとって良いことばかりです。まずは、健康経営が会社にもたらすメリットのひとつ、「生産性の向上」について説明します。 健康な社員が増えると、会社全体のパフォーマンスが上がり、業績アップにもつながります。
健康な従業員が業務効率を高める理由
心身に問題を抱えていると、以下のようなことが起こりやすくなります。
- 社員の作業スピードの低下
- 社員の判断力の低下
- 社員のミスの増加
しかし、社員が健康だと、仕事への生産性は向上します。 これは、医療現場でもよく見られる現象です。
例えば、慢性的な腰痛を抱えている患者さんは、痛みのために集中力が低下し、仕事のパフォーマンスが落ちてしまうことがあります。 しかし、適切な治療とリハビリテーションによって痛みが軽減されると、集中力も回復し、仕事にも前向きに取り組めるようになるのです。
このように、心身の健康は、業務効率に直結する重要な要素と言えるでしょう。 心身が不調な状態と快調な状態での「時間当たりの成果」の違いは明らかです。
欠勤の減少がもたらす影響
社員の健康状態が改善されると、不調で会社を欠勤する人が減ります。
例えば、5人のチームで、1人がお休みしてしまうと、残りの4人でその人の仕事もカバーしなければなりません。 全員が健康で仕事に取り組むことができれば、それぞれの持ち場で力を発揮し、チーム全体で十分な成果を上げることができます。
また医療現場では、インフルエンザの流行期に、医師や看護師が欠勤してしまうと、病院の機能が麻痺してしまう危険性があります。 そのため、医療従事者は、普段から健康管理に気を配り、感染症予防対策を徹底しています。
企業においても、社員の健康管理は、事業継続性の確保に不可欠な要素と言えるでしょう。 健康上の理由による欠勤が減ることは、組織全体の生産性を底上げすることになります。
生産性向上と職場環境改善の相乗効果
健康経営を進める中で、例えば、社員食堂のメニューが栄養バランスの良いものになったり、休憩スペースがリラックスできる空間に変わったりするかもしれません。 こうした職場環境の改善も、生産性向上に大きく貢献します。
美味しいお昼ご飯を食べれば、午後も元気に仕事ができますよね。 また、休憩時間にゆったりと過ごせれば、心身のリフレッシュになり、集中力も高まります。 このように、健康経営は、色々な面から会社の生産性を高めることにつながるのです。
2.企業イメージの向上
近年、企業の価値を測る上で、製品やサービスの質だけでなく、「どのような会社であるか」という点が重視されるようになってきています。特に、従業員の健康や働きがいを大切にする企業姿勢は、企業イメージ向上に大きく貢献します。健康経営への取り組みは、まさにこの点を強化するための重要な戦略と言えるでしょう。
健康経営優良法人認定が与える信頼性
健康経営に積極的に取り組む企業は、「健康経営優良法人」の認定を受けることができます。これは、国が公式に「この企業は従業員の健康を大切にしている」と認めた証です。
例えば、同じ商品を扱う二つの会社があるとします。一つは健康経営優良法人の認定を受けており、もう一つは特に認定を受けていません。消費者は無意識のうちに、認定を受けている企業に対して、より安心感や信頼感を抱くのではないでしょうか。
これは医療現場にも通じるものがあります。同じ治療を行うにしても、実績があり信頼できる医師にかかりたいと思うのは自然な心理です。企業にとっても、この認定は社会的な信頼を得るための重要な指標となるのです。
求職者や取引先からの評価向上
健康経営は、優秀な人材確保にも有利に働きます。日経新聞社「働き方に関するアンケート」(2023年9月実施)によると、求職者が就職先の決定において最も重視することは心身の健康を保ちながら働けることであると分かっています。現代の求職者は、給与だけでなく、働きやすさやワークライフバランスを重視する傾向があり、「健康を大切にする企業で働きたい」というニーズに応えることは、優秀な人材の獲得と定着に不可欠です。
また、取引先にとっても、従業員の健康を重視する企業は、信頼できるパートナーとなります。健康経営は、長期的な関係構築を支える基盤となります。従業員の健康への配慮は、社内外との良好な関係を築く上で重要な要素となるのです。
CSR活動の一環としての健康経営
CSR(企業の社会的責任)という言葉をご存知でしょうか。企業は利益を追求するだけでなく、社会全体への貢献も求められています。
健康経営は、まさにこのCSR活動の一環と言えるでしょう。従業員の健康を守ることは、生産性向上だけでなく、社会全体の健康増進にも貢献するからです。
3.離職率の低下
優秀な人材の確保と育成は、企業の利益拡大に不可欠です。働きやすい環境を整備し、従業員の満足度を高めることは、定着率向上に直結します。健康経営は、従業員の健康増進を通じて、離職率の低下に大きく貢献する有効な戦略です。
従業員の満足度向上が定着率を高める
健康経営は、従業員の健康状態を改善するだけでなく、仕事への満足度向上にもつながります。健康経営に積極的に取り組む企業は、従業員から「会社が自分の健康を気遣ってくれている」と評価され、仕事へのモチベーション向上、ひいては定着率向上に繋がります。
例えば、ある企業では、社員食堂で栄養バランスの取れたメニューを提供したり、スポーツジムの利用を補助したりすることで、従業員の健康意識を高めました。その結果、従業員満足度が向上し、離職率が低下しました。
これは、健康経営が従業員のエンゲージメントを高めることにも繋がっていると考えられます。エンゲージメントとは、従業員が仕事や会社にどれだけ愛着を持っているかを示す指標です。健康経営を通して、従業員が会社に認められ、大切にされていると感じれば、エンゲージメントは高まり、結果として離職率の低下に繋がります。
具体的な取り組みとしては、社員食堂での健康メニュー提供、スポーツジム利用補助、休憩時間の確保などが挙げられます。これらの取り組みは、従業員の健康意識向上、食生活改善、運動習慣の促進、ストレス軽減、リフレッシュ効果による集中力向上などに繋がります。
健康不良による退職リスクの軽減
健康不良は、従業員の退職の大きな要因となります。健康経営は、従業員の健康状態を改善することで、健康不良による退職リスクを効果的に軽減します。
例えば、ある企業では、定期健康診断の実施に加えて、産業医による健康相談や保健師による生活習慣指導などを実施しています。これにより、従業員の健康状態を早期に発見し、適切な対応をすることで、重篤な病気の発症や長期療養を防ぎ、結果として退職リスクを減らしています。
早期発見・早期治療は、医療現場においても非常に重要です。例えば、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、初期段階では自覚症状が現れにくいですが、放置すると心筋梗塞や脳卒中などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。定期的な健康診断や健康相談を通じて、生活習慣病のリスク因子を早期に発見し、適切な指導を行うことで、重篤な病気の発症を予防し、健康寿命を延ばすことができます。企業においても、従業員の健康管理は、事業継続性の確保に不可欠な要素と言えるでしょう。
4.医療費の削減
健康経営と聞くと、どうしてもお金がかかるイメージがありますよね。確かに、社員食堂の改善や運動設備の導入、健康診断の充実など、初期投資が必要となるケースも多いでしょう。
しかし、健康経営は決してコスト増の要因となるばかりではありません。むしろ、長期的な視点で見ると、医療費削減に大きく貢献する戦略となりうるのです。今回は、健康経営がどのように医療費削減を実現するのか、具体的に解説します。
医療費削減による企業の負担軽減
従業員の健康状態が悪化すると、医療費の増加により健康保険料の負担が増加する可能性があります。健康保険料は給与水準に基づいて決まり、企業と従業員が折半して支払うため、企業にとっても大きな負担となります。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は、初期段階では自覚症状が乏しいことが多く、放置されがちです。
しかし、これらの病気が進行すると、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な疾患を引き起こすリスクが高まります。そうなると、長期の入院や高度な医療が必要となり、医療費はさらに増加します。
健康経営では、定期健康診断の受診率向上や生活習慣病予防のためのセミナー開催、社内フィットネスジムの設置など、様々な取り組みを通じて従業員の健康増進を図ります。これにより、生活習慣病の予防や早期発見が可能となり、重篤な疾患への進行を抑制することができます。結果として、医療費を抑制し、企業の負担を軽減することができるのです。
まとめ
健康経営は、従業員の健康増進だけでなく、企業の利益拡大につながります。 本記事では、以下の4つのメリットを紹介しました。
- 生産性向上
- 企業イメージの向上
- 離職率の低下
- 医療費の削減
これらは一見バラバラに見えますが、実は全て繋がっています。 社員の健康状態が良くなれば、仕事への集中力やモチベーションも向上し、結果として生産性や企業イメージの向上に繋がります。 また、健康で働きやすい環境は、社員の定着率を高め、離職に伴うコストを削減するだけでなく、優秀な人材の確保にも繋がります。 健康経営は、短期的な費用対効果だけでなく、長期的な視点で企業の持続的な成長を支える重要な戦略と言えるでしょう。
最初は小さな一歩からでも、健康経営に取り組んでみませんか?
産業医 / 健康経営アドバイザー 松田悠司