健康づくりの指針が改正(2026年10月)|がん検診・精密検査の受診勧奨で企業が見直したい5つのこと

「健康診断で『要精密検査』となった従業員がいても、実際に受診したかどうかまでは確認できていない」「がん検診は健康保険や市町村の話で、会社が関わるものではないと思っていた」。中小企業の人事・総務・安全衛生担当者の方の中には、このように感じている方もいるのではないでしょうか。 [S1]

2026年10月19日、厚生労働省は「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」の改正を公示しました。この記事では、公示資料と指針本文・新旧対照表をもとに、今回の改正のポイントと、企業がまず見直したい5つのことを整理します。 [S1]

健康保持増進指針とは?今回の改正のポイント

この指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項に基づいて公表されているもので、事業者が講ずるよう努めるべき労働者の健康の保持増進のための措置(健康保持増進措置)について、原則的な実施方法を定めたものです。 [S1] [S2]

これまでの指針は、生活習慣の改善などによる病気の発症予防(一次予防)が中心でした。今回の改正では、健康診断等による病気の早期発見・早期治療(二次予防)を、健康保持増進措置として指針上に明確に位置づけています。新旧対照表を見ると、具体的な措置の例示にも「がん検診等の受診勧奨」が加えられています。 [S1] [S3]

二次予防の対象として挙げられている健康課題は、次のとおりです。 [S1]

  • がん
  • 女性特有の健康課題(月経不順、月経困難症、過多月経、月経前症候群、更年期障害等)
  • 歯科疾患
  • 骨粗しょう症
  • 眼科疾患

あわせて、医療保険者等との連携や、治療と就業の両立支援の取組も明記されました。適用日は、公示日と同じ2026年10月19日です。指針の趣旨には、がんが我が国の死因の第1位であり、生涯のうちに約2人に1人が罹患すると推計されていることも記載されています。 [S1] [S2]

1.健康教育で「検診の意義」と「精密検査の必要性」を伝える

指針では、二次予防を進めるためには、正しい情報の提供等を含む健康教育等が必要であるとしています。二次予防に関する健康教育として、実態に応じて次のような項目を教育することが示されています。 [S2]

  • がん検診等の科学的根拠に関する知識や意義の理解
  • がん検診等の検査結果に応じた精密検査等の受検や専門医への受診の必要性
  • 利用可能な自治体や医療保険者のがん検診等や保健事業

例えば、健康診断の結果を配布するタイミングに合わせて、「要精密検査」と判定された場合には医療機関を受診する必要があることを説明し、加入している健康保険や居住地の市町村で利用できる検診の案内先をまとめて紹介する方法があります。 [S2]

2.検診を受けられる機会をつくる

指針では、二次予防の取組として、国が市区町村の検診として推奨している5つのがん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん)の検診と、その結果に基づく精密検査の受診勧奨が挙げられています。女性特有の健康課題、歯科疾患、骨粗しょう症、眼科疾患等については、検査等とその結果に基づく専門医への受診勧奨が挙げられています。 [S3]

取組の方法としては、会社が自ら、または医療保険者と連携して実施する健康診断の機会を活用した受診機会の提供や、労働者の居住する市町村が健康増進法に基づいて実施する検診の受診勧奨、受診のための休暇の付与等が示されています。 [S2] [S3]

例えば、定期健康診断を委託している健診機関に、同じ日に受けられるがん検診のメニューがあるかを確認する、市町村の検診の案内時期に合わせて社内で周知する、といった方法が考えられます。なお、がん検診等の機会を提供する際は、健康診査の実施等に関する指針に定められた要件や、精度管理等に留意することとされています。 [S2]

3.「受けてください」で終わらせない受診勧奨の工夫

指針では、検診等の受診やその結果に応じた精密検査の受診勧奨を進めるために効果的な取組として、次のようなものが挙げられています。 [S2]

  • 啓発パンフレットの配布、ポスターやサイト等への社内掲示
  • 全ての労働者を対象としたメールや社内通達の発出
  • 健康診断実施者に対する精密検査の受診勧奨の業務委託
  • 医療保険者が保健事業等で実施する健康診断の案内
  • 労働者本人が利用可能な自治体の検診や健康相談等の利用勧奨
  • がん検診等の受診に対する費用助成や特別休暇の付与
  • 安心して受診できるよう、治療と就業の両立支援の取組の促進と周知

これらをすべて一度に行う必要はありません。指針自体も、全ての措置の実施が困難な場合には可能なものから実施するなど、事業場の実態に即して取り組むことが望ましいとしています。例えば、まずは全従業員向けのメールで検診の案内を送り、次年度に特別休暇や費用助成の導入を検討する、という段階的な進め方も考えられます。 [S2]

4.健康情報の取扱いルールを確認する

がん検診や精密検査の結果は、特に配慮が必要な健康情報です。指針では、健康保持増進対策を進めるに当たって、健康情報を含む労働者の個人情報の保護に配慮することが極めて重要であるとしています。 [S2]

健康指導の項目には、「労働者本人の同意を得て検査結果を把握した場合」における、精密検査の受診勧奨や治療に向けた保健指導が挙げられています。また、取組の事務に従事した人が取得した健康情報は、その労働者の健康保持増進のために必要な範囲を超えて利用してはならないことに留意するよう示されています。例えば、受診勧奨のために結果を確認する担当者と確認する範囲を決め、それ以外の目的に使わないことを社内ルールとして明文化しておくと、従業員にも説明しやすくなります。 [S2]

5.方針・計画に位置づけ、両立支援とセットで進める

指針では、事業者が健康保持増進方針を表明し、課題の把握、目標の設定、計画の作成・実施・評価という流れで、継続的かつ計画的に進めることが示されています。その際は衛生委員会等を活用して取り組むこと、また衛生委員会等の設置義務のない小規模事業場でも、労働者等の意見が反映されるようにすることが必要とされています。 [S2]

例えば、次回の衛生委員会や職場の打合せで「健康診断後の精密検査の受診状況」と「検診の案内方法」を取り上げ、来年度の計画に盛り込む、といった進め方が考えられます。課題の把握には、定期健康診断結果や医療保険者から提供されるデータ等の客観的な数値を活用することが考えられるとされています。 [S2]

受診の結果、治療が必要になる従業員もいます。指針では、職場における治療と就業の両立支援の取組に当たっては、治療と就業の両立支援指針に基づき必要な措置を講じることが望ましいとしています。受診勧奨と両立支援をセットで周知しておくと、従業員が受診をためらう理由を一つ減らすことにつながります。 [S2]

よくある質問

Q.がん検診の費用助成や特別休暇は、必ず導入しなければなりませんか?

指針では、費用助成や特別休暇は、受診勧奨を進めるために効果的な取組の例として挙げられています。また、全ての措置の実施が困難な場合は、可能なものから実施するなど、事業場の実態に即して取り組むことが望ましいとされています。自社の状況に合わせて、取り組めるものから検討してください。 [S2]

Q.社内に産業保健スタッフがいない小規模な会社は、どうすればよいですか?

指針では、小規模事業場で事業場内の推進スタッフの確保等が困難な場合には、事業場外資源を積極的に活用するほか、社外の健康支援サービスを利用することも考えられるとしています。事業場外資源としては、医療保険者、地域の医師会や歯科医師会、地方公共団体、産業保健総合支援センター等が挙げられています。 [S2] [S3]

Q.健康保険組合から健康診断結果の提供を求められました。本人の同意は必要ですか?

指針では、法律の規定に基づいて医療保険者から定期健康診断に関する記録の写しの提供を求められた場合、事業者は提供しなければならないこととされている点に留意が必要であり、この規定に基づく提供は、第三者提供に係る本人の同意は不要であると記載されています。 [S2] [S3]

まとめ:まずは「要精密検査」の方への案内から

今回の改正で、がん検診等や精密検査の受診勧奨といった二次予防が、健康保持増進措置として指針上に明確に位置づけられました。健康教育、受診機会の提供、受診勧奨の工夫、健康情報の取扱い、方針・計画と両立支援の5点を、できるところから見直してみてください。まずは直近の健康診断で「要精密検査」となった方への案内方法を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。 [S1] [S2]

参考資料

[S1] 「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に関する公示|厚生労働省(資料取得日:2026-10-21)

[S2] 001760640.pdf(資料取得日:2026-10-21)

[S3] 001760641.pdf(資料取得日:2026-10-21)

一般的な情報提供を目的としています。個別の対応は産業医等の専門家にご相談ください。

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本記事は2026-10-21時点で確認した公的資料に基づきます。制度の最新情報は参考資料のリンク先をご確認ください。

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産業医 / 労働衛生コンサルタント / 健康経営エキスパートアドバイザー 松田悠司

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