「内定者に健康診断をいつ受けてもらえばよいか」「事務職だけの会社でも、雇入れ時の安全衛生教育は必要なのか」。4月入社の準備は年明けから本格化しますが、健康管理の手続きは人事の採用業務の中で後回しになりがちです。
この記事では、新入社員を迎える前に会社が確認しておきたい健康管理の準備を、法令と厚生労働省の資料に沿って整理し、1月からの逆算スケジュールにまとめます。
雇入時の健康診断:11項目と、省略できる場合
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、医師による健康診断を行わなければなりません。項目は次の11項目です。 [S1]
- 既往歴・業務歴の調査
- 自覚症状・他覚症状の有無の検査
- 身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖・蛋白)
- 心電図検査
- 入社前の健診結果で代えられる場合:医師による健康診断を受けてから3か月を経過しない人を雇い入れる場合で、本人がその結果を証明する書面を提出したときは、相当する項目を省略できます [S1]
- 定期健康診断との関係:雇入時の健康診断を受けた人は、その実施日から1年間に限り、定期健康診断の相当する項目を省略できます [S1]
- 記録の保存:結果に基づき健康診断個人票を作成し、5年間保存します [S1]
- 受診時間の賃金:労使間の協議によって定めるべきものとされ、事業者が支払うことが望ましいとされています [S3]
健康診断の結果に異常の所見があった場合は、定期健康診断と同じく、医師の意見を聴いて就業上の措置を検討します(労働安全衛生法第66条の4)。 [S5]配属前に確認しておくと、無理のない配置につながります。
雇入れ時の安全衛生教育:2024年4月から全業種で全項目
労働者を雇い入れたときは、従事する業務に関する安全・衛生のための教育を行わなければなりません。 [S1]以前は一部の業種で教育項目の一部を省略できましたが、この省略規定は廃止され、2024年4月1日からは業種にかかわらず全項目の教育が必要になっています。 [S2]
- 機械・原材料等の危険性や有害性と、その取扱い方法
- 安全装置・有害物抑制装置・保護具の性能と取扱い方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- その業務で発生するおそれのある疾病の原因と予防
- 整理・整頓・清潔の保持
- 事故時等の応急措置と退避
- そのほか業務に関する安全・衛生に必要な事項
事務職が中心の職場でも、パソコン作業の健康管理、転倒の防止、災害時の避難などを「自社の業務に合わせた内容」で教育し、実施日と内容を記録しておきましょう。十分な知識・技能があると認められる人については、該当する事項の教育を省略できます。 [S1]
入社後のメンタル不調への備え
新しい環境に慣れるまでの数か月は、生活リズムや人間関係の変化が重なり、不調が表に出やすい時期です。入社時に、相談窓口と産業医面談の申込方法を伝えておくと、本人も上司も早めに相談しやすくなります。厚生労働省の「こころの耳」には、新入社員向けのセルフケアの基礎知識や、研修で配布できるリーフレットがあります。 [S4]上司が気づきたいサインと対応は「新入社員のメンタルヘルス対策」で解説しています。
4月入社までの逆算スケジュール(例)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1月 | 健康診断機関の予約枠を確認する。内定者に、入社前3か月以内の健診結果の提出か、入社時の受診かを案内する |
| 2月 | 雇入れ時の安全衛生教育の資料を自社の業務に合わせて更新する。相談窓口の案内を準備する |
| 3月 | 雇入時健康診断の実施、または健診結果の書面を受け取る |
| 4月 | 安全衛生教育を実施し、記録する。有所見者について医師の意見を聴く |
| 5〜6月 | 配属後の様子を上司から聞き取り、必要に応じて産業医面談につなぐ |
よくある質問:入社前に大学や前職で受けた健康診断で代えられますか?
受診から3か月を経過しておらず、本人がその結果を証明する書面を提出した場合は、相当する項目について雇入時の健康診断を省略できます。足りない項目があれば、その項目だけを実施します。 [S1]
参考資料
[S1] e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第35条・第43条・第44条・第51条(資料取得日:2026-10-29)
[S2] 厚生労働省「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令等の施行について」(令和4年5月31日 基発0531第9号)(資料取得日:2026-10-29)
[S3] 厚生労働省「労働基準行政全般に関するQ&A(健康診断)」(資料取得日:2026-10-29)
[S4] 厚生労働省「こころの耳」新入社員の方のためのセルフケア基礎知識(資料取得日:2026-10-29)
[S5] e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の4(資料取得日:2026-10-29)
一般的な情報提供を目的としています。個別の対応は産業医等の専門家にご相談ください。
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本記事は2026-10-29時点で確認した公的資料に基づきます。制度の最新情報は参考資料のリンク先をご確認ください。
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産業医 / 労働衛生コンサルタント(保健衛生) / 健康経営専門医 松田悠司
