「労働基準監督署の調査が入り、健康診断と長時間労働者の面接指導について是正勧告を受けた。期限までに何を直し、何を報告すればよいのか」。名古屋市・愛知県内の中小企業の経営者・総務担当者の方から、この種のご相談は毎年一定数あります。
愛知労働局の公表資料によると、令和6年に監督指導を実施した6,817事業場のうち4,534事業場(66.5%)で何らかの法違反が認められ、違反事項では労働時間・休日(19.6%)、安全基準(17.0%)、割増賃金(13.8%)に続いて、健康診断が546件(8.0%)を占めています。健康診断関係の指摘は、決して珍しいものではありません。 [S1]
この記事では、監督指導で健康診断や面接指導を指摘されたときに、会社が是正報告までに行うべきことを、産業医・労働衛生コンサルタントの立場から手順として整理します。
監督指導の流れと、受け取る書類の見方
労働基準監督官は、定期監督や労働者からの情報をもとに対象事業場を選び、原則として予告なく立ち入ります。帳簿、賃金台帳、タイムカード、機械・設備、作業方法などを確認し、違反が認められれば事業主に是正を指導します。 [S2]
調査の結果として会社が受け取る書類は、一般に次のように区別されます。文書に記載された法令の条文と、是正期日を最初に確認してください。
| 書類 | 意味 | 会社の対応 |
|---|---|---|
| 是正勧告書 | 法令違反が認められた事項。違反した条文と是正期日が記載される | 期日までに是正し、是正報告書を提出する |
| 指導票 | 法令違反とまでは言えないが、改善が望ましい事項 | 改善内容を報告する(期日の指定がある場合はそれに従う) |
| 使用停止等命令書 | 危険性の高い機械・設備等について、その場で使用停止などを命じる行政処分 | 命令に従い、是正後に解除を受ける |
健康診断・面接指導で指摘されやすい4つの事項
健康診断や面接指導に関する指摘は、労働安全衛生法の次の条文に基づくものがほとんどです。自社がどれに該当したのかを、勧告書の条文で確認します。 [S3]
- 健康診断の未実施・一部未実施(第66条):雇入時健診の漏れ、深夜業・特定業務従事者の6か月ごとの健診漏れ、パートタイム労働者の対象判断の誤り
- 健康診断結果の医師の意見聴取・事後措置の未実施(第66条の4、第66条の5):結果を本人に返して終わっており、医師の意見を聴いた記録がない
- 長時間労働者への面接指導の未実施(第66条の8):時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者への申出勧奨や面接指導の記録がない
- 産業医の未選任・定期健康診断結果報告の未提出(第13条、第100条):常時50人以上なのに産業医の選任報告がない、健診結果報告書を監督署に出していない
是正報告までの手順
- 指摘事項を条文ごとに分解する:勧告書の各項目について「何が・誰に・いつまでに」必要かを一覧表にする。健康診断関係は、対象者の名簿(雇入れ日・業務・労働時間)がないと進まない
- 未実施の健康診断を手配する:健診機関に日程を押さえ、受診できない労働者の理由(退職予定・休職中など)を記録する
- 医師の意見聴取を実施し、記録を残す:産業医がいない事業場は、地域産業保健センター(50人未満・無料・原則年2回)か、スポットで対応する医師に依頼する。意見は健康診断個人票の「医師の意見」欄に記入してもらう
- 面接指導の体制をつくる:月80時間超の労働者を毎月抽出する手順、本人への申出勧奨の文面、面接を担当する医師を決める。過去分は、該当者に申出の意思を確認した記録を残す
- 是正報告書を作成する:項目ごとに「是正内容」「是正日」「証拠書類(健診結果、意見聴取の記録、面接指導の記録、選任報告の控え)」を添える
- 再発防止の仕組みを決める:年間の健診スケジュール、意見聴取の期限管理、長時間労働の月次チェックを、衛生委員会または担当者の業務に組み込む
産業医・労働衛生コンサルタントとして、松田はこう考えます
是正報告は「書類をそろえて期限内に出す」ことが目的になりがちですが、監督署が見ているのは、指摘された違反が再発しない体制があるかどうかです。健康診断の指摘は、ほぼ例外なく「実施後の意見聴取と事後措置」まで一体で確認されます。健診だけ慌てて受けさせても、医師の意見が記録に残っていなければ、次の調査で同じ指摘を受けます。
50人未満の事業場では「産業医がいないので意見聴取ができなかった」と考えがちですが、地域産業保健センターやスポットの医師に依頼する方法があります。当事務所では、是正報告に必要な医師の意見聴取・面接指導をスポットで行い、労働衛生コンサルタントとして是正報告書の構成と再発防止策の設計を支援しています(労働衛生コンサルタントによる支援)。 [S4]
よくある質問:是正期日までに健診が間に合いません
健診機関の予約状況などで期日内に実施できない場合は、監督署に事情を説明し、実施予定日を示したうえで報告の時期について相談します。黙って期日を過ぎることは避けてください。
よくある質問:指導票は無視してもよいですか
指導票は法違反の指摘ではありませんが、改善が望ましい事項として記録されています。次回の調査で改善状況を確認されることがあるため、対応内容を報告しておくことをおすすめします。
参考資料
[S1] 令和6年の愛知労働局における監督指導、申告処理及び司法処分の状況について(愛知労働局PDF)(資料取得日:2026-10-27)
[S2] 労働基準監督官の仕事(厚生労働省・労働局資料PDF)(資料取得日:2026-10-27)
[S3] 労働安全衛生法(e-Gov法令検索)第13条・第66条・第66条の4・第66条の5・第66条の8・第100条(資料取得日:2026-10-27)
[S4] 地域産業保健センター|愛知産業保健総合支援センター(資料取得日:2026-10-27)
一般的な情報提供を目的としています。個別の是正報告の内容は、所轄の労働基準監督署の指示と専門家の助言に従ってください。
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本記事は2026-10-27時点で確認した公的資料に基づきます。
ご相談・お問い合わせ
「是正勧告を受けたが、医師の意見聴取や面接指導を頼める医師がいない」「是正報告書の書き方と再発防止策を相談したい」という名古屋市・愛知県内の事業場の方は、あいち松田産業医事務所にご相談ください。産業医契約の有無にかかわらず、スポットで対応します。
産業医 / 労働衛生コンサルタント(保健衛生) / 健康経営専門医 松田悠司
